第10回 小豆島
二十四の瞳の舞台として知られる小豆島は瀬戸内海では淡路島に次いで2番目に大きな島で、古事記や日本書紀にも阿豆枳島(あずきじま)と記されており古い歴史のある風光明媚な島です。島の東に位置する最高峰星ヶ城は小さな島にも拘わらず標高817mもあり、これに連なる寒霞渓は奇岩、名峰からなる渓谷美として有名で、山頂よりの瀬戸内海の眺望には素晴らしいものがあります。中世以降は海運の要衝であった事から、瀬戸内沿岸のみならず上方との交流が深く農村歌舞伎、太鼓台祭り、安田踊り等といった古くからの伝統芸能も引き継がれている文化色豊かな島でもあります。また四国八十八カ所のミニチュア版ともいえる小豆島霊場八十八カ所には、古より島外から数多くのお遍路さんが巡礼にいらしています。
小豆島は気候風土が温暖少雨で地中海によく似ている為、明治41年に日本で初めてオリーブの栽培に成功し、今や全国的にも有名になりオリーブの島としても知られています。
その他に有名な特産品として江戸時代より続く醤油、佃煮、手延べ素麺等があり、また山海の幸にも恵まれた美食の島でもあります。
◆ ◆ ◆
寒霞渓のロープウェイはゴンドラがそそり立った岩壁の合間を間近に縫うように昇降するので迫力があり、殊に紅葉の季節の美しさは格別です。ただし紅葉の盛りの休日は観光客が殺到し3時間待ちとかになる場合もあります。
そんな時には表十二景、裏八景と呼ばれる美しい登山道を歩いて奇岩の織りなす景色を楽しむのもまた一興です。裏八景の一つ「石門」は寒霞渓を構成する奇岩、名岩の中でも特筆に値する景観です。火山岩がアーチをなしてまさに門を呈しており、その中を山頂への登山路がくぐっていきます。石門から向こうには「幟岩(のぼりいわ)」が見えています。
御存知、農村歌舞伎!中山農村歌舞伎の舞台は天保4年に築造されたと伝えられる茅葺きの小屋で国の重要文化財に指定されています。
素人芝居とはいえ200年以上続いている伝統芸能の舞台に立つのは身が引き締まる思いです。
秋祭りの「ふとん太鼓」は、布団(実は木製)と呼ばれる屋根をつけた櫓に大きな太鼓を綱で吊るし、それに小学校5,6年生の子供が乗り込み太鼓を敲きます。大人120人以上で太鼓台を舁(か)き、傾けたり、頭上に差し上げたり、時には何度も放り上げたりして勇壮な演技を競います。この間大きく傾いたりしても乗り子は太鼓を整然と敲き続けなければなりません。
小豆島霊場七十二番札所番「笠が滝」と四十二番「西の滝」よりの眺望。八十八カ所のうちにはこの様によくこんなところにお堂を建てたな、と思うような山岳霊場がいくつもあり、これらからもとても美しい眺めが楽しめます。
また一番札所「洞雲山」には夏至の50日前後の晴天の日、それも数分間のみ洞窟の中の岩肌に錫杖を持った観音様が足許から徐々に現れます。この奇跡のような「夏至観音」の有難いお姿を拝む為だけに小豆島を訪れる方もいらっしゃいます。
小豆島のすぐ傍にある大余島、中余島の2島は干潮時には砂州で繋がり歩いて渡れるようになります。「道の真ん中で手をつないだカップルは結ばれる」と口コミで広まり最近はエンジェルロードと称して縁結びのスポットとして賑わっています。
土渕(どぶち)海峡はギネスブック認定の世界で最も狭い海峡です。古来より橋によって繋がれている為一つの島と認識されていますが、実は小豆島は2つの島からなっており写真の右岸と左岸は別の島なのです。
◆ ◆ ◆
二十四の瞳映画村、尾崎放哉庵、醤油記念館、銚子渓お猿の国、オリーブ公園、大阪城残念石等々他にもまだまだ紹介したいところが沢山ありますが、まずはこれ切りにて。
皆様も是非一度は小豆島にお越しになられて、実際の美しい風景と文化、山海の珍味をお楽しみになって下さい。
樋出 誠
|